top of page
線虫成虫_edited_edited.png

どのようにして受精卵から複雑な動物個体が出来るのか? 
杉本研究室では、
発生における細胞ダイナミクスの原理的解明と進化プロセスの理解を目指し、線虫Caenorhabditis elegansとその近縁種を用いて、分子から個体レベルまでの解析を行っています。
実験手法としては、分子遺伝学・高時空間分解能ライブイメージング解析・生化学・ゲノム機能学などの手法を統合的に用いて研究を進めています。

 


線虫C.elegansって?

C. elegansは、1970年代にシドニー・ブレナーによって多細胞動物のモデル生物として選ばれてから、プログラム細胞死の発見、RNA干渉法の発見など、多くの重要なメカニズムの発見に貢献してきました。959個という少ない細胞からなり、その細胞系譜がすべて明らかになっています。雌雄同体で世代期間が3日と短く、CRISPRによるゲノム編集をはじめ種々の遺伝子操作技術の適用ができ、透明で生きたままライブイメージングが可能であるという様々な利点から、個体発生のよいモデル生物として研究に使われています。

1. 組織特異的な微小管形成制御の研究

1cell embryo

複雑な生物の体は、1細胞の受精卵が決まった時期と軸に細胞分裂を繰り返すことで形成されます。どのようにして細胞は正しく分裂・分化し、様々な組織をもつ個体になるのでしょうか?この問いに答えるため、私達は細胞骨格である微小管に注目し、特定の組織や細胞周期の時期において微小管の形成とダイナミクスがどのようにコントロールされているのかについて研究しています。特に紡錘体微小管の極となる中心体の制御、チューブリンアイソタイプの性質、微小管形成核であるγ-チューブリン複合体の組織特異性などに焦点を当てています。

2. 線虫近縁種間での比較解析

C. elegans

MC170024_Ce_200uscale.jpg

C. inopinata

MC170024_Cin_200uscale.jpg

C. inopinataは、2013年に石垣島のオオバイヌビワの中から発見された、系統樹上ではC. elegansに最も近い線虫種です。しかし両者の線虫は、その生態、最適温度、体の大きさ、性様式、耐性幼虫への誘導方法など様々な面で相違点がみられます。遺伝的には近い種間での、こうした大きな違いがどのように生じているのかを、ゲノム情報および分子-細胞-個体レベルでの遺伝子機能の比較解析によって明らかにし、生物の普遍的なメカニズムの進化プロセスを理解することを目指しています。

3. 進化細胞生物学

図1.png
図1.png

C. elegans

P. pacificus

図1.png
図1.png

​生物の個体としての多様性がどのように生みだされるのかを理解するために、私たちは近縁種間の細胞レベルでの比較解析を行っています。これまでの解析により、生物の発生とその恒常性維持のために、必須の過程と進化的に可変な過程があることが分ってきました。また、ある生物に必須の遺伝子が他の生物で欠失していることがよくありますが、失われた遺伝子の代わりに、どのように発生に必要な過程を達成しているのでしょうか? この疑問について、私たちはC. elegansと近縁種の初期胚の紡錘体形成や生殖顆粒形成、性決定経路などに注目して研究しています。

​4. 染色体工学​

図1.jpg

germline

C. elegansと近縁種の線虫は6本という比較的少ない数の染色体をもっており、全ゲノムの構造が分っています。そこで、高度な遺伝子操作技術を駆使して、人為的にゲノムを再編成したり、キネトコアの局在を改変するといった試みを行っています。これらの人為的な操作によって、新しい種を生み出す可能性とともに、ゲノム恒常性維持のためのメカニズムを知る手がかりとなります。また、ある種の線虫で観察されるプログラムされた染色体削減のメカニズム解明にも取り組んでいます。

bottom of page